創業融資は自己資金10%以下でも審査は通る?
創業融資を受けたいけど、「自己資金がほとんど用意できない…」という人は多いでしょう。日本政策金融公庫(公庫)の融資では自己資金が重要と言われますが、自己資金が10%にも満たない場合でも審査に通る方法はあるのでしょうか?結論から言えば「不可能ではない」が簡単ではありません。
本記事では、自己資金の役割や少額でも融資を引き出すポイントを解説し、自力での準備が難しい場合になぜプロのサポートが有効かまで紹介します。自己資金が少なくても希望を持ちながら、同時に「やっぱり専門家に頼んだ方が確実かも」と感じていただける内容を目指します。
目次
そもそも創業融資における自己資金の役割とは?
創業融資の審査で自己資金が重視されるのは、「その事業に創業者自身がどれだけコミットしているか」を示す指標になるからです。金融機関から見ると、自ら資金を貯めて事業に投じる姿勢は本気度や計画性の表れであり、熱意や自己責任の覚悟として評価されます。また、自己資金がある程度ないと、全て借入に頼った場合に返済負担が過大になり事業継続が危うくなるためです。実際、公庫のガイドでも「創業にかかる費用を借入だけに頼ると毎月の返済が重荷になり、資金繰りが苦しくなる」と警告されています。毎月の売上が思ったほど伸びなかったり予想外の出費があると、借入だけで賄っているとたちまち資金ショートしてしまうリスクが高いのです。
要するに自己資金は「事業への本気度」と「返済余力のクッション」を示すものなのです。自己資金ゼロでは融資がなかなか下りないというのが現実であり、審査担当者からすれば「貯金もせずに起業しようとしている=計画性に欠ける」と判断されかねません。創業融資を目指すなら、思い立った段階からコツコツと自己資金を蓄えておくことが重要になるのはこのためです。
日本政策金融公庫が推奨する自己資金の目安は30%

「自己資金はどのくらいあれば十分か?」という問いに明確な正解はありませんが、一般的には必要資金の約30%程度を自己資金でまかなうのが望ましいと言われます。公庫の調査によれば、創業資金総額に占める自己資金割合は平均で2割強(20~25%程度)というデータもあります。しかし平均並み(2割程度)では「標準的」というだけで、審査を有利に進めるには3割程度を自己資金で用意しておくのが安心というのが専門家の共通認識です。実際、公庫の創業融資でも自己資金が総資金の1/3以上あると審査で有利になる傾向があるとも言われています。
かつて公庫の新創業融資制度では「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が要件とされ、最低ラインは1割(10%)でした。現在この要件は撤廃されていますが、「1割では心もとない、できれば3割用意してほしい」というのが暗黙の基準として残っているのです。自己資金が3割に満たないと審査通過は一気に厳しくなるとも言われ、実際自己資金割合が20%を下回ると通過率がかなり低くなるため、自己資金が不足する場合は事業計画の内容充実や返済能力のアピールなどでカバーする必要があります。
自己資金10%以下でも融資が通るケースとは?
自己資金が1割以下しかなくても融資が通るケースは 「皆無ではないがレア」 です。日本政策金融公庫の創業融資では伝統的に自己資金1割が一つの目安でしたが、2024年以降この自己資金要件は撤廃され、自己資金ゼロでも形式上は申請可能となりました。つまり制度上は自己資金10%以下でも門前払いにはなりません。しかし、要件がなくなったとはいえ審査で自己資金額が参照される点は変わらず、自己資金が極端に少ない場合は他の部分でよほど優れた評価ポイントがないと承認は難しいのが実情です。
では具体的にどんな場合に自己資金1割未満でも融資が通るのか、考えられるケースをいくつか挙げます。
- 少額融資で計画が現実的な場合:自己資金が50万円程度しかなくても、必要資金総額を500万円以内など小さく抑え、融資希望額を現実的な範囲(この例では450万円程度)に収めているケースです。旧制度の「自己資金=総額の10%」という基準から言えば、自己資金50万なら融資上限は約450万という計算になります。その範囲内で事業計画が堅実にまとまっていれば、自己資金1割程度でも融資実行に踏み切ってもらえる可能性があります。
- 創業者の経験や実績が抜群に強い場合:自己資金はわずかでも、創業者本人が長年その業界で経験を積んでいたり、大口の取引先との契約をすでに持っていたりするケースです。また、自己資金ほぼゼロでも10年の実務経験と仕入先との契約確保が評価され融資に成功したケースもあります。
以上のように、自己資金1割以下でも融資が通った人は存在します。ただし共通するのは「自己資金の不足分を埋めるだけの何か強い材料がある」ことです。裏を返せば、それらがない状態で自己資金が少ないとまず通らないということでもあります。
自己資金の「出どころ」が審査に与える影響
自己資金の金額以上に注意したいのが、その「出どころ(資金の来歴)」です。金融機関は通帳の写しなどを通じて「そのお金がどのように用意されたか」を細かくチェックします。
基本的に「預貯金通帳で確認できる、出どころの確かな現金」だけが自己資金として認められます。言い換えれば、出所不明なお金は自己資金と見なされないということです。
具体的には、コツコツ貯めてきた預金であれば立派な自己資金として認められます。例えば給与所得から毎月一定額を積み立ててきた履歴が通帳に残っていれば、それは計画的に準備した証拠として高く評価されるでしょう。また、退職金や資産売却による現金なども、きちんと証明書類(退職所得の源泉徴収票や売却の契約書等)を用意すれば自己資金に含めることが可能です。親族からの贈与資金も、贈与契約書を交わすなど適切な手続きを踏めば自己資金と認められるケースがあります。
一方で注意すべきは、見せ金のような不自然な入金はすぐバレるという点です。融資直前になって口座にポンと大金が振り込まれていると、「どこから来たお金か?」と審査担当者に疑われます。「たまたまタンス預金を入れただけ」と言っても、急に大きな金額を預け入れれば見せ金だと判断され自己資金と認められないことが多いのです。実際、直前に親族名義の口座から移した資金などは審査で否定されやすいので注意が必要です。また、返済義務のある他人からの借入金は自己資金とはみなされません。たとえ無利息で親が貸してくれたお金でも、「いつか返さなければならないお金」は自己負担とは言えないため、金融機関は自己資金から除外して考えます。
要するに、審査担当者は「その自己資金は本当に自分で貯めたお金か?」を厳しく見ているということです。通帳で資金の流れを追われる以上、ごまかしは通用しません。出どころが不透明なお金を自己資金に見せかけるのはリスクしかないので絶対に避けましょう。
見せ金はNG!通帳でバレる嘘の自己資金

「見せ金」とは、一時的に借りたお金や手元の現金を融資申込時だけ口座に入れて、自分の自己資金が多く見えるよう偽装する行為です。前述の通り金融機関には通帳コピーを提出しますが、見せ金はまず間違いなく発覚します。審査担当者は数ヶ月分の残高推移や入出金履歴をチェックするため、直前に不自然な大金が動いていればプロの目には一目瞭然ですし、面談で入金の経緯を聞かれて答えに窮すれば即アウトです。
見せ金が発覚した場合、融資は100%否決されます。それだけではありません。見せ金のような行為は金融機関からすれば詐欺的行為とみなされます。公庫からの融資が二度と受けられなくなるのはもちろん、信用情報にも傷が付き他の銀行からの借入も絶望的になります。事業どころか創業者本人の信用に一生かかわる大問題です。
金融取引において信用は命です。「バレなきゃいいだろう」と見せ金に手を出すのは、自分の首を絞める行為だと肝に銘じてください。たとえ自己資金が少なくても、嘘の申告をしてまで融資を得ようとしてはいけません。誠実に準備した自己資金と綿密な事業計画で勝負する方が、長い目で見て必ずプラスになります。
自己資金が少なくても通る人の特徴3選

自己資金が乏しい中で創業融資を勝ち取る人には、共通して「他で補って余りある強み」を持っています。自己資金不足を跳ね返すような審査上のプラスポイントをいくつも用意できれば、融資担当者も前向きに検討してくれるのです。ここでは、自己資金が少なくても融資に通った人に見られる特徴を3つ紹介します。
- 特徴1:業界での豊富な経験とスキル – 該当者は創業予定の業界で長年の実務経験を積んでおり、専門知識や資格を有しています。同業種での勤務歴が長かったり、関連資格・実績がある場合、それ自体が大きな信用材料です。例えば「前の職場で10年間料理長を務めた」「業界の国家資格を持っている」といった経歴は、事業成功の確率を高める要素として評価されます。
- 特徴2:既に証明されたビジネスの実績 – 創業前から具体的な契約や売上の見込みを掴んでいる人です。たとえば「すでに開業を待っていてくれる顧客がいる」「取引先との契約書がある」「予約や受注が入っている」といった状況は、事業の実現可能性を強力に裏付けます。融資審査では「本当に売上が立つのか?」が重要ポイントなので、こうした既存契約や発注書は自己資金の少なさを補って余りある武器になります。
- 特徴3:綿密な創業計画と強い事業への熱意 – 自己資金が乏しい人ほど、事業計画書を練り上げ熱意を伝えることでカバーしています。具体的な数字に基づいた収支計画や資金繰りのシミュレーションを用意し、面談でも自分の言葉で熱意とビジョンを語れる人は、自己資金が少なくても高く評価されます。「お金はないが、知恵と情熱は誰にも負けない」というタイプです。公庫の担当者いわく「自己資金は重要な要素の1つだが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要」ということです。まさに計画力と熱意でハンデを帳消しにしているわけです。
以上のような特徴を持つ人は、自己資金が少なくても融資審査を突破できる可能性があります。裏を返せば、これらが備わっていない状態だと自己資金不足を補えず苦戦するでしょう。経験や実績が乏しい、計画にも自信がないという方は、次章以降で述べるような事業計画のブラッシュアップや専門家の力を借りることも検討してください。
自己資金が少ない場合に補うべき事業計画の要素
自己資金の少なさを補うためには、事業計画書(創業計画書)の内容をより充実させることが不可欠です。資金計画や収支予測を練り上げ、自己資金不足という弱点を他の情報でカバーしましょう。特に、以下のポイントは審査担当者が重視するため、入念に盛り込むべきです。
- 事業の強みとターゲット市場の明確化:あなたの事業のセールスポイントは何か、どんな顧客層(ターゲット)を狙っているのかを具体的に示します。ただ「良い商品だから売れる」では不十分で、競合他社にはない優位性や顧客のニーズを踏まえた強みをアピールしましょう。
- 綿密な競合分析:同業他社や競合サービスについて調査し、「競合が〇〇だから自社は△△で差別化する」といった戦略を記載します。競合を無視した計画は説得力に欠けます。市場における自社の立ち位置を客観的に説明しましょう。
- 資金の使い道(資金使途)の詳細:融資で調達した資金を何にどれだけ使うかを具体的に書きます。内訳(設備資金○○万円、運転資金○○万円など)を明示し、その費用がなぜ必要か根拠を示します。自己資金が少ない場合、なおさら「借りたお金はこれこれに使い、事業に直結させます」という説得力が重要です。
- 返済計画の提示:何年でどのように返済していくか、資金繰りの計画を示します。例えば「毎月○万円の返済を○年間続ける。売上計画上、十分返済可能」など、融資額に見合った返済プランを記載しましょう。返済原資となる利益見込みと合わせて説明できるとベストです。
- 現実的な収支予測:売上高や経費の見積もりをできるだけ具体的な数字で示します。「初年度は○○万円の売上、経費△△万円で黒字達成」など、根拠ある試算を載せます。数字には根拠(市場規模から逆算した売上、見込み客数×客単価の試算 etc.)を付け、楽観的すぎない現実的な計画にすることが大切です。
これらの要素を網羅した創業計画書であれば、自己資金が少ないハンデを相当程度カバーできます。審査担当者に「自己資金は乏しいが、計画性と戦略で補っている。融資金の使い道も明確で無駄がない」と納得してもらうことが目標です。逆に言えば、自己資金が少ないときにフワッとした計画書を出してしまうと、「資金もないのに計画も甘い」と判断されてしまいかねません。資金計画の練り直しや、必要に応じて専門家のチェックを受けるなどして、計画書の完成度を高めておきましょう。
審査担当者が重視する「資金の使い道」のリアル
創業融資の審査では、「借りたお金を何に使うのか?」つまり資金使途が適切かどうかも厳しく評価されます。審査担当者は提出された創業計画書や資金繰り表を見ながら、融資金の使い道が事業計画と合致しているか、その使途が事業成功に直結しているかをチェックします。具体的には、設備資金と運転資金のバランスや配分が妥当か、必要以上に過大な経費を計上していないか、といった点を見ています。「この費用は本当に必要なのか?」という視点で精査されるイメージです。
例えば、飲食店の開業で500万円の融資を希望しているのに、そのうち400万円を内装工事費に充て、運転資金(家賃や仕入れ、人件費など)がわずかしか確保されていないといった計画だと、「開業後すぐ資金繰りがショートするのでは?」と懸念されます。審査担当者は「黒字化までに必要な運転資金がきちんと盛り込まれているか」も見ており、売上が軌道に乗るまでの赤字期間をカバーできる運転資金の額が適切か評価しています。
また、資金使途の項目と事業計画の内容にズレがある場合も要注意です。事業計画に書かれていない用途にお金を充てようとしていれば、必ず質問され説明を求められます。たとえば計画書には無い高額な機械設備の購入費が資金使途明細に入っていれば、「これは何に使う費用ですか?」と突っ込まれるでしょう。嘘やごまかしは論外ですが、単純な記載漏れや認識違いであっても、「計画が煮詰まっていない人だ」という印象を与えかねません。
さらに、融資後にも資金の使い道はチェックされます。日本政策金融公庫では融資実行後、資金が予定通りの用途に使われたかどうか報告を求められる場合があります。領収書や請求書などのエビデンス提出を求められることもあり、虚偽の申告は後からでも発覚します。万一、融資金を事業とは無関係なことに流用したりすれば契約違反となり、一括返済を求められるリスクもあります。
以上のように、審査担当者は「この融資金をきちんと事業のために使ってくれるか?」という視点で資金使途を厳しく見ているのです。自己資金が少ない人ほど、「限られたお金を無駄なく事業成長に投下する」という計画を示す必要があります。使い道を具体的かつ合理的に説明し、「この融資があれば事業を軌道に乗せられる」という筋道を立てることが重要です。
自己資金0円で通った実例とその裏にある戦略
「自己資金ゼロだけど創業融資を受けたい」そんな希望を持つ方もいるでしょう。結論から言えば、自己資金ゼロで融資を受ける可能性はゼロではありませんが、現実的には非常にハードルが高いです。しかし実際に自己資金ほぼ0円で融資審査を通過したケースも存在します。
ただ、ほとんどの場合で審査は通過しないとお考えください。
自己資金不足でも通る創業計画をプロに頼むべき理由
自己資金が少ない状態で創業融資を通すには、通常以上に周到な準備と戦略が求められます。経験や計画の面で何か一つでも弱い部分があると、それだけで不利になってしまいます。「自分でできる範囲で頑張りたい」と思う気持ちも大切ですが、自己資金不足というハンデを抱えている場合は、創業融資のプロ(専門家)の力を借りることを強く検討すべきです。
創業融資支援に詳しい中小企業診断士・税理士・公認会計士・コンサルタント等であれば、金融機関が審査で何を重視するか熟知しており、事業計画書の作成を的確にサポートしてくれます。自己資金が少ない状況でどこを補強すれば良いか、プロの視点でアドバイスをもらえるのは大きなメリットです。また、数字の整合性や説得力のある資料づくりにおいても専門家の協力は心強いでしょう。実際、国家資格保有者の中小企業診断士等が作成・チェックした事業計画書は説得力が高く、融資審査の通過率向上に寄与するというデータもあります。
特に日本政策金融公庫の創業融資では、事業計画書のフォーマットや着眼点がある程度決まっています。創業支援のプロなら公庫の担当者が好むポイントを押さえつつ、あなたの事業の魅力を最大限引き出す計画書を一緒に作ってくれるでしょう。さらに、融資申込書類の準備や面談対策についても指導が受けられます。専門家のサポートを得ることで、初めての融資申請でも安心して臨め、結果的にスムーズな融資実行につながる可能性が高まります。
費用はかかるかもしれませんが、自己資金不足で融資が下りなかった場合の損失を考えれば安い投資と言えます。プロと二人三脚で練り上げた創業計画は、自分一人で悩んで作ったものより格段に完成度が上がるでしょう。「自己資金が足りない分、計画の完成度で勝負する」そのための最短ルートがプロへの相談なのです。
まとめ
自己資金が10%以下でも創業融資の審査に通過する道はゼロではありません。しかし、それは並大抵の準備では実現しない、狭き門であるのも事実です。自己資金が少ない方こそ、今回紹介したポイントを踏まえて事業計画を入念に作り込み、必要に応じて専門家の力を借りながら挑戦してください。希望は必ずありますが、同時に専門的なサポートを得ることで、その希望を現実のものとする確率は大きく高まるでしょう。あなたの夢の実現を応援しています!
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2025年の創業融資審査通過率100%の「店舗ビジネス特化」の創業融資支援サービス「創業融資戦略室」のご紹介です。
エステサロン・整体院・パーソナルジム・ネイルさサロンなどの店舗ビジネスに特化した創業融資の支援サービスで、事業計画書などをお作りしています。
報酬は成果報酬型なので、審査に通過しなかったら費用は0円と「安心のサービス」となっています。創業融資戦略室の代表が、銀行出身・経営コンサルティングファーム出身者で、かつ自分自身でも飲食店を経営しており、もちろん創業融資も自分で申請して通過しています。
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